もしかしたら、この電話番号ならつながるかもしれない。


その思いに、あたしは反射的に携帯電話を取り出して番号を打ち込んでいた。


そしてすぐに発信ボタンを押す。


しかし、聞こえてきたのは冷たい電子音だった。


『おかけになった電話番号は現在使われていないか……』


そのガイダンスにあたしは一気に肩を落とした。


やっぱり……だめか……。


販売してすぐに個人情報を売りとばし、居場所をくらませる。


それが藤井さんの……いや、【彼氏人形】を売っている団体のやり方なんだ。


「つながらないのね……」


恭子さんも良子さんもそれは予想していたことだったようで、さほど驚いた様子は見せなかった。


「あたし……これからどうすれば……」


泣きそうになり、頭を抱える。


「その住所のあった場所へ行ってみようよ」


良子さんがふいにそう言ってきた。


「え？」


あたしは顔を上げて良子さんを見る。


良子さんは真剣な表情だ。