レンガを掴んだ実紗を見て葵君が「それ、どうするつもりだよ」と、低い声で言った。


すでに実紗を攻撃する態勢に入っている。


「実紗お願い、それはやめて」


「どうして? なんであたしがやめる必要があるの?」


「だって……こんなの勝ち目なんてないじゃん!!」


「じゃぁどうしろっていうの? 一生葵の奴隷みたいに生きていけって言うの!?」


「それは違うけど……!!」


あたしの言葉を遮るように、強い風が吹いた。


ゴォーッと唸り声を上げてかけていく風。


あたしと実紗は風が巻き上げた砂ぼこりに目を閉じた。


そして再び目を開けたとき……葵君が、実紗の目の前にいた。


実紗は目を見開き、持っていたレンガを振り上げる。


葵君はそのレンガを簡単に取り上げて……。


「やめてぇぇぇぇ!!!!」


あたしの悲鳴を、強い風がかき消していく。