葵君と2人で立っている実紗を見つけて、あたしはかけよった。


その雰囲気は普通ではなく、2人の間だけ黒いモヤがかかっているように見えた。


「なにをしているの?」


あたしはその雰囲気を明るく変えるために、笑顔でそう聞いた。


しかし、聞いた瞬間気が付いてしまった。


実紗の頬に大きなアザができていることに。


そのアザは素手で殴ってできるようなアザではなく、ロープやムチなど細い道具で叩かれた痕に見えた。


「陽子、その頬と耳、どうしたの?」


あたしが唖然として実紗を見ていると、先に陽子があたしの異変を指摘してきた。


「これ? 大丈夫だよ、大したことないし」


あたしはそっと自分の頬に触れた。


耳ばかり気にしていたけれど、歯が欠けるほど殴られた頬も当然腫れ上がっている。


「なにが大したことないのよ……!」


実紗が表情をゆがめ、今にも泣き出してしまいそうになる。


「実紗?」


「あたしは……もう限界なのよ!!」


両手で顔を覆い、叫ぶ実紗。