ベッドの上の白い枕は血で赤く染まり、それはもう完全に乾ききっていた。


ちゃんと病院へ行ってみてもらわなきゃ。


そんな思いがよぎる。


でも……。


病院に行って、なんと説明をすればいいんだろう?


耳をちぎられそうになったなんて言えば、大事件に発展するかもしれない。


「あ……」


あたしはハッとした。


そうだ、大事件にしてしまえばいいんじゃないだろうか?


世間に【彼氏人形】の事を暴露すれば、大きな組織ごと消滅させることができるかもしれない。


真っ暗な闇の中に浮かんだ、1つの希望。


あたしは自然と笑顔を浮かべていた。


「どうしたの陽子、機嫌がいいみたいだね?」


蒼太が不思議そうにあたしを見てくる。


「そうかしら?」


あたしは首をかしげてそう答えたのだった。