「先生みたいな人はライバルが多すぎてちょっとね」


あたしは冗談でそう言い、ヒョイッと肩をすくめてみせた。


「あはは。生徒から逃げていたもんね」


実紗が思い出し笑いを見せる。


だけど結局、あの後に女子生徒たちに捕まって両手じゃ抱えきれないくらいのプレゼントをもらっていたらしい。


「先生っていいなぁ……」


着替えを終えてお店の外へ出ながら実紗がポツリと呟いた、その瞬間。


電柱に隠れた場所から手が伸びて来て、実紗の腕が強引に引っ張られるのが目に入った。


ハッと息を飲み、慌ててお店から出て後を追う。


「実紗!?」


大きな声で名前を呼ぶと、実紗の腕を引きずって行く葵君の姿が見えた。


どうしてここへ!?


実紗が葵君に迎えを頼むとは思えない。


きっと、葵君がまた勝手な判断でここまで来たのだろう。


「葵君やめて! 実紗は怪我をしているのよ!!」