そう言ってくれる蒼太に泣きそうになる。


これが本当の彼氏からの言葉だったらどれだけ嬉しかっただろうか。


蒼太のようにかっこよくて、優しい男性にあたしは今でも憧れているのだ。


だけど、愛の囁きはあたしにとって自分の身を守るだけの言葉となってしまった。


そこに本物の愛情など、存在していない。


表面上だけで『好き』という言葉を使わないといけないことが、すごく悲しかった。


「陽子、君がいつまでもこうしていい子でいてくれれば、俺はそれで満足なんだよ」


蒼太があたしの耳元でささやく。


その囁きに背筋に虫唾が走った。


ゾクゾクと寒気が駆け上がり、嫌悪感が湧き上がってくる。


蒼太の言う『いい子』とは、自分に忠実な犬のような存在を指しているように感じる。


少しでも不満に思うことがあれば暴力で抑制し、自分好みに手なづけていく。


蒼太が抱きしめる力を更に強めたとき、まるで天からの助けのように携帯電話が鳴った。


「ごめん蒼太。電話が鳴っているから」


あたしはそう言い、サッと蒼太から身を離した。


鞄から取り出した携帯電話を確認すると、実紗からメールが届いていた。


《陽子。あたしはいつまで葵の機嫌をとっていればいいのかな?》


そんな文面が目に入る。