蒼太にとっては、あたしが今こんな話を持ち出すことが遅いくらいなんだ。


だから、素直に話を聞き入れてくれないんだ。


「俺は、陽子にも非があると思うんだけど?」


「そんな……あたしは何もしてないじゃない!」


あたしは思わず大きな声でそう言っていた。


少し帰る時間が遅くなっただけ。


それだけで鼻血が出るほど殴られるなんて、普通じゃないんだと、蒼太に理解してほしい 。


「……何もしてない?」


蒼太の目が、徐々に吊り上がっていくのがわかった。


あたしは咄嗟にベッドから下りて、ドアを背にして立った。


すぐ、部屋の外へ逃げられるように。