自分の考えは正しいと信じ切っていて疑わない蒼太。


「あのね、人間同士のカップルで言う喧嘩っていうのは、口喧嘩がほとんどだと思うの」


「口喧嘩?」


「そうよ。簡単に相手を殴ったり蹴ったりしないの」


できるだけゆっくり、丁寧な口調で蒼太に説明をする。


「……俺のやっていることが間違っているってこと?」


一瞬にして、蒼太から笑顔が消えた。


その冷たい表情に緊張が走る。


「間違っているっていうか……行き過ぎていると、思うの」


自分の体を自分で抱きしめ、震えだしそうなのをなんとか抑える。


「そうなのかな? 俺のやっていることは行き過ぎている?」


「うん……」


怖い。


いつ蒼太の手が伸びてきて髪をわしづかみにされるだろうかと、ビクビクしている。


「じゃぁ、陽子が俺に合わせてくれればいいんじゃないかな?」


「へ……?」


「俺、陽子との付き合いは長いけれど、陽子がそんな風に考えていたなんて全然知らなかったんだ。


それって、陽子が素直に気持ちを話してくれなかったからだろ?」


蒼太がそう言い、あたしは何も返事ができなかった。