蒼太はそう言い、あたしに携帯電話を投げ返してくる。


あたしはそれを受け取ることもできず、脇腹を押えた状態で蒼太を見た。


蒼太は軽く笑顔をつくり、靴下とジーパンを元に戻す。


「どうしたんだよ陽子。俺の事好きなんでしょう?」


あたしはその質問に答えられない。


真面目で優しいと設定した蒼太。


あたしの憧れたのは、こんな蒼太じゃない。


蒼太はジリジリとあたしの方へ近づいてきて、目の前でしゃがみ込んだ。


「俺はね不真面目な陽子に怒っているんだよ? 陽子の事が嫌いで手を挙げているワケじゃないんだ」


「……でも、こんなことされるほど悪いことなんて……あたししてないよ……?」


怖くて、か細い声が出た。


蒼太に理解できるかどうかわからないけれど、限度があるという事は説明しなきゃいけない。


「本当かな? 俺のスイッチ、切ろうとしたよね?」


蒼太がグッと顔を近づけてくる。