路地へ入ってから勢いを失ってしまった実紗が頷く。


しかし、その時あたしたちの目の前に【ドールハウス】という置き看板が目に飛び込んできてしまったのだ。


「あった!! 本当にあったよ!!」


途端に実紗は走り出し、嬉しそうに看板を指さす。


あたしはその真新しいような真っ白な看板を見たとき、ブワッ!と、胸の奥から真っ黒な不安があふれ出してきた。


「すごいよ陽子、早くおいで!!」


手招きする実紗に、その場から動けなくなるあたし。


これ以上は行っちゃいけない。


これ以上進むと、きっと取り返しのつかないことになる。


実紗はお店の前で興奮気味に騒いでいる。


きっとガラスのショーケースの中に人造人間のサンプルが飾ってあるのだろう。


あたしの方は見向きもしなくなった。