「だからあたし、たまらず言ったの。『そんなに怒る必要ないじゃない、人形のくせに。本当に彼氏でもないくせに』って……」

「実紗……」


そう言ってしまう気持ちも、あたしはよくわかる。


昨日あたしは必死で蒼太のご機嫌をとったけれど、こちらが我慢できなくなる可能性は十分にあった。


「そしたら葵、急に無言になってあたしに近づいてきて……」


そこまで言い、実紗は言葉を切ってあたしに抱きついて来た。


あたしは実紗の頭を優しくなでる。


「それで、折られたの?」


小さな声でそう聞くと、実紗は何度も頷いた。


「両親には階段からすべて落ちたことにした……」


実紗の言葉に、あたしは下唇を噛みしめた。