aqua regia


思えば、何を知った気でいるのか。

俺はさっきまで彼女がクラスメートだということも知らなかった。放送部だってことも放送室でサボっているってことも最近になってから知った。

でも、それだけだ。

名前も、どうして単位を落としそうになるまでサボるのかも、保健室じゃなくて放送室なのかも知らない。

それにさっきの眼。

あれは、この前の昼に、水を掛けてしまった時と同じ眼だ。敵意と嫌悪に満ちた眼。

彼女が吐いた言葉は、俺も思っていた。

クラスメートだって思っていたはずだ。なのに、誰もそれを口にしなかった。

本来は、久し振りに授業に出た彼女が言うことじゃない。いつも一緒に教室で過ごす俺等が言うことだ。