互いの距離を縮めるべくして1歩ずつ、ゆっくりと歩み寄る。
「ホントはね、私もさっき文弥くんに触れたいって言おうとしてたんだ」
「クスっ。では僕達は以心伝心という訳ですね」
「うん!」
気恥ずかしさからか行動より先に会話が先行してしまう。
どこかまだぎこちなくて、傍から見たら初々しい2人。
そして、いよいよ文弥くんの胸に身体を預けようとした、その次の瞬間
キーンコーンカーンコーン
午後の授業を知らせる予鈴が無常にも鳴り響いた。
「・・・」
「・・・」
「鳴ってしまいましたね」
「う、うん」
「時間切れですかね」
「・・・うん」
真面目な文弥くん。
大きく広げていたその腕をやっぱり下ろしてしまう。
「・・・行こうか」
ワガママかもしれないけど、こんな時くらいは・・・
仕方なく私は屋上の出入り口へと向かい歩き出した。
その時
「舞さんっ!」
突然、手首を掴まれたと思ったら
「え・・・・」
いつの間にか私の身体は文弥くんの腕の中にすっぽりと収められていた。
「10秒だけ・・・このままで」
私の耳に文弥くんの声が優しく甘く響いてくる。
大好き!文弥くん。

![【完】ズルい瞳[短編]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.944/img/book/genre1.png)