後輩くんの手がいよいよ私の肩に置かれた時
「………なにしてんだよ?」
聞いたことのない、やけにドスのきいた声が頭上から降ってきた。
「え………?」
見上げれば、後輩くんの腕を掴み上げている
それはそれは恐ろしい佐伯くんの姿。
その瞳は強烈なまでに研ぎ澄まされていて
「あ……や……あの……」
後輩くんはまるでメデュッサにでも睨まれたかのよう、恐怖のあまり言葉も出ない様子。
だから
「あ……あのね?私の髪飾りが校則違反だから、彼が没収しようとしてくれてたの」
慌てて仲裁に入ったんだけど
「その役目はいつも僕のはず、ですよね?」
「ひ………」
佐伯くんの圧倒的な威圧感を前に、思わず怯んでしまう。
「す、すみません……俺、知らなくて」
後輩くんが知らないのは当然なんだけど、ね。
「わかればいい。サッサと持ち場に帰れ!」
「は、はいっ!」
可哀想な後輩くん。
まるでトムソンガゼルのような足取りで、この場を去って行った。

![【完】ズルい瞳[短編]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.944/img/book/genre1.png)