定期演奏会まで二週間を切った。

練習時間のほとんどが合奏にあてられるようになり、桐谷先輩と二人きりの練習はあの日以来できていない。

指揮の先輩の意気込みは日に日に増していて、今も前で指揮棒を振り回している。

その先輩の名前が堤だということを、最近知った。

「もう一回! 72小節目から!」

72小節目のフレーズは難しくて、俺には全然吹けない。

やっぱ桐谷先輩、上手いよな……

顔色ひとつ変えず、堤先輩に目を据えている桐谷先輩だが、その指はすごい速さで動いている。