それから暫くして近付いてきた足音


それが良さんだって分かるからわざと突っ伏したままの私


でも突然止まった足音に気付く前に、私に体重をかけてもたれかかってきた香りに瞳を開けた


「重っ!!………」


突っ伏してたせいでステンレスのそこに押し付けられた私はどんどん苦しくなる


『何してるの?』


「(ちょっ……ほんとに苦し…)」


足をバタバタとさせて反応すれば意地悪く聞こえた笑い声


それと同時に離れた重みに私は勢いよく体を起こした


一応病み上がりなんですけど!!


大きく息を吸い込むと隣に腰掛ける相手


『ねぇ、ここで二人で何してたの?』


涙目で横を向けば、悔しいほど整った顔の眉間にシワが寄せられていた


「………お料理教室…ですかね?」


『ふーん、そういうのってもっと大勢でするんさじゃないの?』


「さぁ……初参加でして……」


休日なのに会うこともない人に会い、蛇に睨まれる蛙状態が再び訪れる


あたしここで何してるんだろう……


のこのこ着いてきて、どうしてこんな空気を味わっているのか分からない


とりあえず息苦しくて立ち上がると、エプロンを素早くはずした。


『靖子』