『気を付けて帰れよ。』


部長の声がかけられてようやく解散となったのは開始されてから二時間が経った頃だった。


今ならバスまだあるから帰れる…


時間をチェックして、診療所方面へと向かう長田くんたちとさよならを済ませた。


そして部長から預かっていたお会計を済ませた私は、お店の人にお礼を言いやっとほっとする……


こういうのもやっぱり事務部がやるのが当たり前で、全員が部屋にいないことを確認してから外に出ると目が合う彼女を発見

気まずいな………


「……お疲れ様です。」


『森井先生は?』


はい?


少し酔ってろれつの回らない彼女は、短いミニスカートから伸びる足が少しふらついている。


「中にはいませんでしたけど?…それじゃあお先です。」


『じゃあ車とりに行ったのかなぁ。送ってもらうって約束だし。』


ドクン


通り様に聞こえた声に一瞬胸がざわつくけど、動揺しないように頭を下げてその場を離れる


目の前が駅で良かった…


何だか私も色々忘れたくて久しぶりに飲んだからちょっと酔い気味だし…

「はぁ……」


外の風邪が冷たくて気持ちいい…


5月に入って日中は温かいけど、朝晩はまだ冷えるこの季節


ロータリーに着いてバスが来るまでベンチに座り込む


………アイツあの人を送ってくんだ


そう思うと、前回乗ったあの席を思い出して顔が熱くなる


淫らな息遣いと密室でのキス


「はぁ…目が回る」


お酒に毒された体に自ら熱を与えなくてもいいのにと私は思いきり頭を動かすと、目の前がグワンと大きく揺れる


あー………このままだと倒れる。


何だか可笑しくなって笑いが込み上げてきた私を、あの香りが包んだ気がした


何でこんなときに……


それでも抵抗できない体と心に私はそのまま意識を手放した