いきなり何を言うかと思えば、岩島さんと横にいた斎藤さんが私の胸を明らかに除き混んでくる


「ちょっ……やめてくださいよ。」


『若いって羨ましいわね、見た?あの張り』




慌てて背を向けてカッターのボタンを留めベストを羽織り、膝丈の黒のスカートをはいた。



それよりもみんなどんだけ化粧するんだろうか


患者さんにこれじゃあ害が及びそう


背中まである髪を一つに適当に纏めて、名札を付けた私は足早にそこから脱出することに成功出来た



「(やった……私生きてるよね、うん)」



全くこんな事が繰り返されるようになったのも2年前からで、それまではほんとに静かな診療所だったのにな…


受付開始までまだ45分。閉じた総合窓口の横のドアをスライドして入れば、机の上に見よと存在するあのセットに部長を睨んだ


「部長!」


奥の席に座る部長が、飲みかけていたコーヒーを落としそうになりながらも私の方へと振り返る


『は、原田君…どうかしたのかな?』


「どうかしたのかな?じゃないですよ。何でいつも一番出勤でもないのに私なんです!?」



『だって‥‥‥だってさ、相手側からのご指名だし…』


はぁ??


香りの悪巣からやっとの思いで生還したのに、これを見るだけで憂鬱



「その代わり美味しいコーヒーを毎日頂きますからね。」



『(いつも飲んでるじゃん……)』



大きく溜め息をはいた私は、重い足取りで事務部から続く通路のドアを開けて、診察室に入れる通路を通り一番奥の診察室へと向かった


バン!!


「おはようございます。」


デスクに向かってパソコンの画面を見ていた彼の横に、わざと大きな音を立ててそれを置く


羨ましいほど後ろから見てもわかる小さな頭に柔らかい焦げ茶の髪



『靖子、元気が有り余ってるみたいだ』



…………振り向いたコイツがまさにこの診療所に変な風を撒き散らしている元凶



認めたくないけど羨ましい整った容姿のソイツは口元を小さくあげて私を見れば面白そうに小さく笑う