土日にたっぷりと休んだ私は、月曜日もう忘れようと思い、いつも通りに出勤した。


考えても、アイツが私にしたことの意味がわからないままで、こんな年まで恋愛してこなかった地味な女をからかってるだけだって思ったから



「うっ…」


いつものようにキツイ臭いのするロッカールームに入れば、病棟の看護師たちが着替えていた


この間程ではないにしろ、看護師ってこういう香りさせていい人たちなの?


早く着替えて出よ……


レモンイエローのワンピースを、頭から脱ぎカッターに着替えいつものように髪を纏める


『原田さん。』


着替え終えた私に届いたのは話したことも数回しかない看護師


名前は……何だっけ。


外来看護師は毎日顔合わせるから名前は分かるけど、病棟の夜勤含める人たちは入れ替わりがあったりするから顔と名前が一致しない



少し甘い香りを放つ彼女は目がくりっとしていて可愛らしい


「何ですか?」


『森井先生と金曜日何処へ行ったの?』


名札を取り出そうとしていた手が止まり慌てて彼女を見る





『私、金曜日夜勤で、先生に聞きたいことあったのにあなたを車に乗せて帰るの見ちゃったの。』


ドクンドクンと高鳴る鼓動


「えっと……貧血て倒れまして……そこに偶然先生がいて送ると」


嘘は言ってない……多分


ていうか、この子の目が怖いんですけど。


『先生が自分から?』


「はい。断ったんですけど送ると。」


うん、絶対嘘はいってない。


『ふーん…そうなんだ。』



「………」


暫く沈黙が続くと彼女は何か言いたげにロッカールームをあとにした。


「(……何…朝から。)」



週明けなのにどっと疲れた私は、診察室の電気がついてないのを確認してさっさと新聞を置きデスクに突っ伏した



アイツに関わるとろくなことないじゃん。


あの子先生のこと好きですって丸分かりだし、勘違いされた



『おはようごさいます。』


今日もキツイ香りの岩島さんと斎藤さん


彼女たちも先生が大好きなのは分かるが、既婚者で恋と言うよりは先生をアイドルか何かのようにしてるって感じ



「あぁ、もう!」


バンッと机を叩けば後ろにいた部長が小さく悲鳴を上げる


『(原田の様子最近ますます悪い気がする。)』


『(靖子ちゃん入社してきたときは可愛かったのに…)』


後ろでの部長と主任の考えなど知らずにパソコンを立ち上げて予約を確認する。


今日から月頭までは残業だぁ……


アイツが来てから増えた患者数

一人でレセプトを見るのは簡単じゃない


空いた時間に少しずつでも見ていかなきゃ帰れない。



うーんと伸びをして首を回し出勤した香織ちゃんとまた午前を戦う日々が続いた。