目の前を両手で覆う私彼ががこれから何をするか分かったから思わず目を閉じた


「………」


いつまでたっても触れてこない彼にそっと両手をおろして瞳を開ける


キスされそうなんて昨日の今日であるわけないのに思い違いで恥ずかしい


「ツッ!!」


『靖子が悪い』


そう言った彼に両手をあっさり捕まえられ強引なのに優しいキスが落とされる


昨日とは違うキス…


「ん……」


『煽らない』


「……や」


意図も簡単にまた塞がれた唇に力が奪われていく

もがいていた体が嘘のように大人しくなり、ほどかれた彼の手が私の腰と頭を抱き寄せるので必死でワイシャツを握った



「……はぁ」


ようやく解放された唇に気づけば生理的な涙が目にたまる。


『靖子?』


「初めてだったのに………」


俯いたまままだワイシャツを握りしめる手に力がこもるのに、コイツは私を自分の腕のなかに閉じ込める


この年まで付き合ったことがないなんて恥ずかしいことかもしれない


『靖子、俺のこと嫌い?』


「…嫌いです、当たり前じゃないですか。」


『ククッ……素直じゃないなぁ、ほんと。でもこうしたいって思うのは靖子だけ。』



抱き締める腕に力が入ったけど私は何も言えなかった。