時間が過ぎてほしくないと思えば思うほど無情にも過ぎていくもので、残り1日となった夜



レセプトを持って診察室を訪れる私は扉の前で沢山のことを思い出していた


怒鳴ってたことや倒れたこと


何気に私が何かしてるときには全て森井先生の存在が近くにある


今更だけど、いつも側にいてくれたんだよね


コンコン


『はい』


「原田です」


悲しい思いはとっくに閉じ込めた


それに、私はみんなと違ってオフでも会えるからもう大丈夫



「先生、お疲れさまです。レセプトですのでお願いします」


『ん、ありがとう。』


「先生」


椅子をクルリと回して笑顔を見せる彼に声をかける


「先生」


『どうかした?』


声を出して笑う彼にもう一度だけ


「先生……せん」


体が引き寄せられると立ち上がった森井先生の腕の中へ入りきつく抱き締められる



『靖子……煽らないで』


「フフ……煽ってませんって。ただ、先生って呼ぶことはもうないから呼びたかったんです」



そう


もうここの診療所の先生ではなくなれば、こんな風に馴れ馴れしく呼べなくなる


聖治さんとは呼べるけど、先生って今は呼びたくなった


『寂しくなるな……』


「……そうですね」