あれから厳しい寒さにも関わらず、毎日足を運ぶ患者さんたち


3月に入ると、市の広報や院内掲示板に森井先生の異動のお知らせが載った



『先生居なくなってしまうんやね…』


会計を済まされた患者さんのこう言った言葉も増えて、何も言葉を返すことが出来ない私たち


ご年配の患者さんにとっては、丁寧に診察をする先生の大きさは計り知れないのかもしれない


『あと少しですね…』


「そうだね、私たちに出来ることは笑顔で落ち着いて仕事するのみ」


『原田君の言う通りだ』


部長……


『窓口は診療所の顔だ。ここで君達が不安がっていたら患者さんはどうなる。森井先生は確かに地域の皆さんにとても慕われているからな……』


香織ちゃんと苦笑いしてから仕事を再開する


部長だって森井先生の大きさは分かってるからこそ私たちを厳しくしてくれるのだろう


あと何回…………会えるのだろう


カレンダーを数えたくなくて伏せれば溜まり始めたファイルを丁寧に打ち込んでいく作業に取り掛かる