「光さんの旦那さんがヘアメイクのお仕事してるなんて驚きました」


お風呂上がりの私は、かなり楽になった長さの髪を乾かし終えてリビングに来た


『はい、お水』


「ありがとうございます」


グラスについでもらったお水を飲み干した私にもう一杯注いでくれる彼


髪がまだ濡れていて、首元は色気が漂う


『英(ひで)さんは有名なヘアメイクアーティストだから予約が一年先まで埋ってるんだよ』


「一年先!?……そんなにすごい人に切ってもらえたんだ。」


恐るべし光さんの旦那様


妻が美しい整形外科医、夫が有名なヘアメイクアーティスト


まるでドラマのような世界


それに比べて取り柄はほぼない私でこの人はいいのだろうか?


隣でお水を飲む彼の首元に滴が垂れていて、首にかけられたタオルで拭う



『どうかした?』


「……いえ、何か聖治さんと付き合ってるなんてすごいことだなと。」


『どういうこと?』



リビングに移動した私は彼のタオルを奪って、柔らかい髪の毛を優しく拭いていく


『気持ちいい……』



「それなら良かったです。聖治さんは普段はお医者様で私はただの事務だから、こんなことをさせてもらえるのがまだ実感ないんです。」



『職位とかは偶然だよ。僕は靖子が看護師でも何でも関係ないし気にしない。』



拭いていた頭からタオルを離して、手で乾き始めた髪を撫でる


『不安?』


「いえ、幸せだなぁと」



『それは俺のセリフ』



そのまま抱き抱えられた私は、再び彼の熱に溶かされて溺れる



「んっ……ああっ!!」



1度目よりも幸せに感じたその行為に私は噛み締めて涙を流した