はぁ……もう諦めた。


お昼前に片付けたかったけど、コイツのせいで台無し


「あの何で私なんですか?」


『何が?』


私が耳元弱いのを知っててわざとそこで話してるな……


手が自由ならひっぱたいてるところだ。


「他に甘えさせてくれる美人なんているでしょう?何で私に変に構うんですか?」


また大きく溜め息を吐いたのに、回された腕に込められた力が強くなる


「態度が悪いからです?それとも口が悪いから?嫌がらせなら辞めてもらえます?あと主任に変なこと言うのもやめてくださいよ、誤解されたくないので。」


『中村主任に誤解されたくない?どうして?』


「………………」


コイツちゃんと話聞いてた?


小さく笑う彼はそっと私から離れたので、背後にいるヤツを下から見上げた


……ほんとに無駄に整った顔は私よりもずっときれいで睫毛だってうんと長い


『頭にきた』


「は?……なに」


そういいかけた途端視界が覆われて、コイツの綺麗な顔が目の前にあり視線がぶつかる


「…………」


『靖子が悪い』


口角を少しあげて笑う相手は、私の唇を指でなぞると部屋を出ていった


余りに突然のことで、そのままの姿勢で固まる


何…………今……何された?


震える手でゆっくりと口元を覆い、熱い体を何とか抑えようとする


アイツ………キスしてきた


そう頭で分かった瞬間に、一気に顔に熱が伝わるのが分かるほど恥ずかしくなり私は体を屈めて頭をかかえる


『靖子が悪い』


最後に言い放った言葉に今度は怒りが混み上がる


あたしが悪い!!!!?


なんなのほんとに!!!


悔しくて泣きそうなのに、アイツが唇に触れたときのあの顔が目を閉じると浮かんでしまう


………やられた