バンって閉めたドアの奥で顔の熱が上がっていく


事務長なんて気付かなかったのに、新聞差し出しただけで気付くなんて


もしかしてアイツの鼻は犬並み!?


頭を思いきり左右に振ったら目が回ったけど、ほんのり香るそれにちょっとだけ女らしいことを始めた自分に笑えた



それからも、毎日クローゼットに染み込ませたその香りに他の人が気付くことはなかった


私だってアイツに抱き締められた時だけしか感じない程の香り


最初はキツすぎて、誰かに不快を与えてたら嫌だなって思ったけど、アイツ以外が気付かないならいいやって思った



アイツに対する気持ちは分かってるのに、お姉ちゃんの言う通り焦らず過ごそうと思う


そっとコットンに染み込ませたアロマを
枕のカバーの中に入れる



「……………」


あのあとお店に戻って買った違う香り

暫くはアイツの香りに慣れることから始めよう