「こなー!忘れ物ない?」

「うん!大丈夫だよ!」

「そう。…あっ、もうそろそろ行かないといけないんじゃない?」

「わっ、もうこんな時間か!じゃあ、私行くね!」

「はーい。3日間、楽しんできてね!いってらっしゃい!」

「うん!いってきまーす!」


お母さんと、そんな会話をして、元気よく家を飛び出した私。

キラキラ光る太陽と、そよそよ吹く風が、修学旅行へのウキウキワクワク感を、より一層大きくする。


今日は学校集合で、みんなでバスに乗って駅まで行くらしい。

ルンルン気分で、いつもの通学路を歩きながら、ひとりごとを呟いた。


「せっかくの修学旅行なんだし…楽しまないと損だよね」


美由希とペア。
それがなんだってんだ!

気まずさなんか怖くない!
沈黙なんか怖くない!


班やペアを決めた、約1ヶ月前。

実はあれから今日まで、美由希と2人になる機会がなくて、何も話せなかった。


だから、今日いきなり2人になるわけだけど。

ずっと自分に言い聞かせてきた、さっきのひとりごとのおかげか、不思議と不安は小さい。


別に、無理に話せなくてもいい。

絶対に仲直りしなきゃいけないわけじゃない。

気まずさを通り越して楽しめたら、それだけで充分だ。