あっさり卒業式は終わった。
みんなそんなに泣いてはいなかったな。

「……」
いつも昼飯を食べている場所に来てみた。
なんとなく、みんながいる気がして。

ガラリとドアを開けてみる。

「……」
やっぱり、誰もいなかった。
そうだよなぁ……と呟いていつも座っていた椅子に座る。

「楽しかったな……なにげに」

「私も楽しかったよ」

「あー、やっぱり?……!?」

驚いた。
閉め忘れたドアからみんながにやにやとして私を見ていた。


それからみんなで話してばか騒ぎをしていた。
時間を忘れてしまうほどに。

「留衣、帰るよ?」

「あ、はーい……じゃあお先に」

「美樹ー?」

「ここだよー」

「春ー、早く帰る支度して」

「はーぁい」

徐々に人数が減っていき、留衣と優菜で手を振った。
「あ、お母さん?今から帰るから」

「優菜も帰んの?」

「うん、すぐ来るって」

「そっかぁ……」

「留衣ー?ここか?」

「あ、親が来たから帰るね?」

「うん」

「わかった」

「じゃあ、バイバイ」

「バイバイ」

「またね」

優菜と二人になった。
とくに話すこともなくなって、しばらく沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのは優菜だった。

「これ」

「ん?手紙?」

「朝、車で書いてた」

「あらやだ、ラブレター?」

「んなわけあるかアホ」

「優菜ー、迎え来たよ~ごめんね、買い物長引いて。あ、悠さん、優菜がお世話になりました」

「あ、いえ、こちらこそ」

「じゃあ、またね」

「うん、じゃあね」

みんながそれぞれの家に帰っていくのを見た。
やっぱり、少し寂しいかな。
そういえば手紙をもらったんだった。
なんて書いてあるんだろう。


『高校の時、悠と出会えてよかった。楽しかった、ありがとう』

私はこのあと大泣きしたのはいうまでもない。

「悠、帰ろう?」


「うん、帰る」