クラフは驚いた顔で私をしばらく見ていたが、やがてハッとして眉間に皺を寄せた。
「……ッローズ!
俺に呪いを掛けるとは、お前は…」
「えぇ。私、使えるものは使う主義なのよ。それが例え、王子であってもね」
私がそう言って微笑むと、クラフは諦めた様に溜め息を吐いた。
あら。恐れ多い第二王子が、たかが女の子1人に屈するのね?
「………仕方ない。
俺の命ある限り、お前を守ろう」
「簡単に誓ってもいいのかしら?
いいのよ?断っても」
「お前の呪いは強力と聞く。
引きこもって居たとは言え、断れば自分の首が飛ぶ事ぐらい知っているさ」
クラフは苦笑いを浮かべながら、そう言った。
強力な呪いね。
私が得意な契約魔法は『呪い』。呪いって聞くと聞こえが悪いかもしれないけど、呪いはある意味『取引』でもあるの。
呪いと言っても種類がある。
私がクラフに使ったのは、呪う相手の言う事を私が聞く代わりに、私を守らせるという呪い。呪いは強ければ強いほど、断った時の反動が大きい。それこそ、クラフが言った様に。
私は顔を引き締めると、クラフを見て口を開いた。
「私、ローズ・アルファ・アクアマリンは、契約の元、クラフ・ドブァ・ハイラークに絶対の忠誠を誓います」
私がそう言うと、クラフは驚いた顔した。だが、直ぐに微笑みを浮かべると、私の頭をポンポンと撫でた。
なんか、バカにされた様で気に入らないけど、此奴の手は嫌いじゃないわ。
私は乗っけられた手に懐かしさを感じながら、目を閉じた。
これが、私とクラフの出会いだった。