体育の時間が終わり、教室に戻っているとき話しかけようか迷っていた。




何度もチラチラと見てしまう。





でもチキンの私はなかなか話しかけることができない。



それに話しかけるって言ったって、なんて言えばいいの。




こんにちわ、とか?




変だよね。




じゃあ名前なんて言うの?って聞くとか。
でもいきなりそんなこと聞くのおかしいかな。




私がウジウジとしてるうちに女子更衣室についてしまった。





瀬戸くんも男子更衣室に入ってしまった。





…行っちゃった。




もう、私ってほんと馬鹿。





クラスメイトなんだから話しかけたって変じゃないのに。






なのに絶対マイナーなことが頭を過ぎる。
 




このチキン・ネガティブ性格を直したい。

 



「みっちゃんさっきから瀬戸のほうばっか見てたけどどうしたの?」




凛花がニヤニヤしながら肩をつついてきた。




「いや、瀬戸くんって未知な人だから少し気になっちゃって……

下の名前どんなかなぁと思ってたんだ。」




本当は少しどころじゃなくてすっごい気になってるんだけどね。




「あー確かに瀬戸って未知だよねー。



確か下の名前は光輝じゃなかった?
光に輝くって書いて光輝。」





「光輝?」






瀬戸光輝、かぁ。




ふぅん………






「でもさぁ、ぶっちゃけ名前と合ってなくない?」





紗友里さんが鼻笑いをしながらそう言った。




合ってない…?





「さっきの見た?めっちゃダサかったしぃ。
光って目立つってイメージあんじゃん。


なのに目立つどころか…ねぇ?」






「あはは、それ言っちゃあ駄目っしょ。」





紗友里ちゃんに続けてみんなも笑いながらそう言い始めた。




そんなことないよ…




イメージがどうであれ素敵な名前じゃん。
それ馬鹿にするのって違う気がする。




それにさっきのだってただの失敗じゃん。




人間誰でも完璧なワケないんだから、たって一つの失敗だけでダサいなんて言ってたら世の中みんなダサいじゃん。





って心の中でみんなの意見を全否定しても口に出せないのがチキン性格が出てる。





みんなは瀬戸くんの話で盛り上がっていた。




…悪い方向で。






「……ねぇ…瀬戸ってそんなダサくないと思うけど。」






凛花がぽつりと言った。





みんなの視線は凛花に集まる。





「そんな一回失敗しただけでダサいなんて言うのおかしいよ。




それに名前だって素敵な名前じゃん。




ただの私達が考えるイメージであれこれ言うのちがうと思うよ。」  






その言葉で沈黙が訪れた。





でもすぐに紗友里ちゃんが口角を上げた。





「確かに……その通りだね。



うちらのイメージだけで好き勝手言うのおかしかったよね…



ありがとう凛花っ」






「…ううんっ私も偉そうなこと言ってごめんね。」





すごいなぁ…



凛花は間違ってることはちゃんと間違ってるって言えるんだ。




思ってることをちゃんと伝えられるんだ。






羨ましいな…







キーンコーンカーン…






「やばっ話に夢中になりすぎた!
みんな本令だよっ急ごう!」




みんなの足音が響き渡りながら私たちは教室まで走った。