「何ニヤニヤしてるのー？」
後ろの席の紗友里さんが不思議そうな顔で覗きこんできた。
「紗友里さんっ！
し、してないよっ」
「いやいやバリバリしてたよー。
ってか朝のHR終わったよ？
あと紗友里でいいからね！
一時間目体育で移動だから行こっ」
「体育って…男女合同なの？」
「うん。そうみたい。
バスケやるんだって。」
つい“えぇ…“と情けない声を出してしまった。
きっと男子がバスケの試合をやってるときは女子が見て、女子がやってるときは男子が見るって感じになるんだよね。
ってことはもし鈍くさいことをしたらそれも見られるってことでしょ。
恥ずかしいじゃんそんなの。
でもバスケは中学のときにちょっとかじったことあるから大丈夫だと思うけど……
不安になりながらも紗友里ちゃんと凛花と着替えてから体育館に向かった。
体育館にみんなが集まるとチャイムの前に準備体操が始まってチーム分けをした。
私は凛花と一緒のチームだった。
よかった、凛花運動できそうだから頼りになるかも。
最初は男子が試合を初めて女子は端っこのほうで見学していた。
みんな上手だけど一際目立っていたのが安達くん。
ボールをあっという間にゴールに持って行く。
でもゴール近くになって三人に止められてしまった。
安達くんは小さく舌打ちをしてパスを出した。
「瀬戸！」
ボールが向かった先を見るとリップクリームの人が立っていた。
あっ…あの人だ……！
瀬戸くんって言うんだ……
瀬戸くんはパスされたのに気づきボールをキャッチしようとする素振りをした。
でもボールは瀬戸くんの手で受け止められることなく額に直撃した。
そして尻餅をついてしまった。
「…ぶっ…
ちょっと今の見た？
すっごいダサかったんだけど。」
「今の痛っそ～
ってかキャッチも出来ねーのかよ～」
近くにいた女子がクスクスの笑っている。
でも私は笑えなかった。
大丈夫かな…
バスケットボールって意外に硬いし…
「瀬戸くん大丈夫かなぁ…」
ボソリと呟くと凛花が隣から顔を覗きこんできた。
突然だったからびっくりして私は何も言えないまま何故か凛花と見つめ合っていた。
…なんだろ…
やっぱり私顔になんかついてるかな…
朝食べてきたジャムはちゃんと拭いてきたよね…
しばらくすると凛花は私の視界から消えていった。
本当何がしたいんだろう。
「どうしたの凛花。」
「いーや、別に？」
「……………」
…変なの。
それより瀬戸くんの下の名前ってなんだろう。
知りたいな。
話しかけてみようかな…
でも迷惑じゃないかなぁ。
