慌てて走って何とか間に合った。
よかった、ギリギリセーフ。
結局トイレ行かなかったけど…
「みっちゃん遅かったねー?」
ニヤニヤしながら聞いてくる凛花に少し恥ずかしくなった。
トイレから帰ってくるの遅いと変な勘違いされそう。
「結局行けなかった。
女子達が溜まってて入れなかったんだー。」
ってことにしておいた。
号令がかかってみんなが椅子を引く音をたてながら立ち上がった。
その途端に教室に一人、男子が入ってきた。
遅刻かな?
………ってあれ、この人って…
「すみません、遅れました。」
リップクリーム拾ってくれた人じゃん。
同じクラスだったんだ。
なんで昨日気がつかなかったんだろう。
でも彼はあまり目立つタイプでもなさそうだな。
前髪上げるとカッコイイとか眼鏡外すとカッコイイ、みたいな感じでもなさそうだし。
でもやっぱり背、高………
私も女子の中では低いほうじゃないけど、この人と比べると20センチは違うかも。
席は私の斜め前。
髪の毛はくせっ毛なのか毛先が外側に跳ねていた。
私はいつの間にかこの人を観察するのが楽しくなっていた。

