入学式も終わりクラスの友達もできてきた。




放課後に部活は何入るかとかどこの中学出身かなどを話してから帰宅した。




思ったよりもみんな優しそうでよかった。





「えっみっちゃん桜ノ宮駅?
私は新桜ノ宮駅!!
隣の駅だったんだねー!!」





今日から私のあだ名は“みっちゃん“。






そんな呼び方されたことなかったから呼ばれるたびにちょっと緊張する。
本当に私のことだよね?って。




電車に揺られながら色々な話をしているといつのまにか恋バナになっていた。




「ねぇ、みっちゃんって好きな人いないの?」





「………私…恋とかよくわからないの。
初恋もまだだし…
恋愛経験ゼロなんだ。」





恋をしてみたいとは思ったことある。
でも恋をしようとは思ったことがない。




仮にしようと思っても何もわからない私が出来るわけがない。


みんながよく言う“キュン“とか“ドキッ“って言う感情もわからない。



高校生になっておかしいかもしれないけど慣れないことをして失敗して恥をかくよりかはよっぽどマシ。




それに恋なんてしなくっても私は毎日楽しいからそれでいいの。




「そうなんだ。
以外だな~。
みっちゃんって結構恋愛経験豊富そうなのに。



でも初恋がまだなら楽しみはこれからってことだよね。


高校三年間楽しもうっ!!!!」




にかっと笑いながら凛花はピースサインを私に向けた。





《次はー、新桜ノ宮駅、新桜ノ宮。
お出口はー………》





「あっ私ここだ。
それじゃあみっちゃんまた明日ね。」





手を振ってお別れした後私はポケットから携帯を取り出した。



それと同時にリップクリームがコロコロと転がって行ってしまった。



取ろうとしても電車が揺れる度に転がってなかなか掴めない。




すると前から手が延びてきてリップクリームを掴んだ。




「あ、それ………」





私の、と言い掛けるとズイッと私の前にリップクリームを差し出した。





「ん。」





ぶっきらぼうにそう言われたのでお礼も言えずただ受け取るだけだった。



でも拾ってくれたんだからお礼ぐらい言わなきゃ。




そう思い口を開けると丁度私の駅についてしまった。




あ、ついちゃった………




し、閉まっちゃう。





慌てて出て振り返るとその男の子は電車の中で背を向けてしまっていた。





あ………お礼言いたかったな…





そんな私の気持ちを無視して電車は走り去って行ってしまった。