私は一人で体育館に向かった。
午後の授業は篠原くんがどんな人か気になってなかなか集中できずに終わってしまった。
体育館が見えてくると入り口にはもう何人か女子たちがいた。
この子たちみんな篠原くんを見に来たのかな?
女子と女子の隙間から体育館の中を見ると結構人がいた。
どの人が篠原くんかな。
見に来たはいいけど誰が篠原くんかわからないや。
困っていると一人の男子が見事にボールをゴールに入れた。
その途端周りにいた女子たちが歓声を上げた。
あぁ、きっと今シュートしたあの子が篠原くんだ。
確かにあれだったらキャーキャー言われるのもおかしくないかも。
背は瀬戸くんよりも少し低いぐらいだから高いほうだな。
髪の毛は綺麗な栗色。
スラリと長い足に小さい顔。
まるでテレビとかで見るカッコいい芸能人みたいな感じ。
この人が世の中で言うイケメンなんだな…
話してみたい。
タイミングがあったら話しかけてみようかな……
この体験入部が終わって体育館から出てきたときに話せるかも。
終わるまで待ってようかな。
きっと体験入部だからそこまで時間もかからないだろうし。
そう思い終わるまで何分か待っていると見に来ていた女子たちもどんどん帰って行った。
やっぱりみんな私ほど暇じゃないのかなー…
しばらくするとみんな帰って、私一人だけになっていた。
ちょっと見るの飽きたな…
そう考えて座り込んだと同時に“お疲れさまでしたー“と声が聞こえたので勢い良く立ち上がった。
やっと終わったんだ。
なんて話そう…
やばい、もうすぐそこにいるじゃんっ…!
タイミングを見計らって思いきって話しかけた。
「あのっ………!」
私の声に篠原くんは立ち止まった。
そしてゆっくりと私の方に身体を向けた。
うわぁ…
目の前で見ると更にかっこいいなぁ…
本当に芸能人みたい…
「…何?」
篠原くんにそう言われてハッとした。
私、呼んどいて何も言わないとか超失礼じゃんっ…!
ってか何て言うか考えとけばよかったー!
でもくだらないことって思われたらどうしよう。
話しかけるまでは勇気あるくせに、そっからまた私のチキンの性格が出てきたら意味ないじゃんっ
「……………あんた、わざわざ俺が出てくるまで待ち伏せしてたの?」
ま、待ち伏せっ?!
なんか言い方がよろしくないような…
ってかあんたって…
会って早々あんたなんて言い方失礼じゃない?
「ま、待ち伏せって言うか…
その私は」「そーゆー女まじウザイから。
ってか入り口でたまらないでくれない?
迷惑なだけだし。」
私の言葉を遮られて何も言えないでいると、篠原くんは身をひるがえして行ってしまった。
…え?
待って、状況を整理しよう。
私は篠原くんと話してみたくて待っていて……
出てきたから思い切って話しかけたらウザイって言われて行ってしまった……
……篠原くんって顔はカッコいいのに性格は悪いの?!
なんだ、一時間も待って損した。
篠原くんなんて顔だけじゃんっ!
私は機嫌を悪くして帰った。