完全に油断していた私の横をスルリと一人の男子学生が通り抜け、少し前方で立ち止まりガードレールに片足を掛けスニーカーの紐を結ぶ振りをしながら私の顔を覗き見る。

『やられたー』私の顔には、そう書いてあったに違いない。

その男子学生はクスッと声を出して笑い、私に話し掛けてきた……

「……足、早いね。俺たちの会話聞こえてた?

嫌な思いさせてごめんね……

今から俺……アイツらに報告しないといけなくて『なし!』って大声出すけど

ホントは『あり!』だから勘違いしないでね……」

意味深な発言をしてから予告通りに大声で『なし!』と言って笑いながら後ろに戻って行った。

彼の言った『あり!』は【顔】を見たことを後悔しなかったって受け取っていいのだろうか?

「99%の確率で見なきゃ良かった」ってガッカリされるのを覚悟していたのに……

彼の言葉が【1%の奇跡】のように、私の心に突き刺さった棘をあっと言う間に取り除いてくれた。

笑いながら友達のところに戻って行く彼の後姿に「ありがとー」と心の中でお礼を言う。

これからも「99%の確率」でガッカリされたとしても構わない。

【1%の奇跡】を信じて真っ直ぐに前を向いて歩いて行こう……







(おわり)