下町退魔師の日常

「だよな。俺も、そう思う」


 久遠くんは頷いた。


「確信はあるんだ。俺があの短刀に触れた時・・・うまく言えないけど、感じた」
「感じた?」
「あぁ。姫様の、気配をな」


 久遠くんが冗談を言っている風には見えなかった。
 まさか、鬼姫が――?


「俺だから分かる。あの鬼に突き刺した時、短刀は・・・鬼姫は、喜んでいたよ。だから心配なんだ」
「心配・・・?」
「あぁ。どんな手段であれ、短刀があぁやって血を吸っていくのが鬼姫の目的みたいな気がしてな。その目的を果たした姫様は、どんな行動に出るのか」
「・・・・・・」


 うーんと。
 あたしは、頭の中で色々とシミュレーションをしてみる。
 だけど、そのどれもが、あんまりいい結果にはならなかった。


「ゴメンな・・・お前が寝ている間、ずっと考えてた。俺がこの町に来て、本当に良かったのかって」
「何言ってるのよ」


 あたしは、左手をそっと久遠くんの手に添える。
 あたしは元々、超が付くほどの楽天家だ。
 そして、超ド級の負けず嫌いなのだ。
 久遠くんってまだきっと、そこら辺が分かってないのよね。


「あたしは良かったって思ってるよ。久遠くんが来てくれたお陰で松の湯はホントに助かってるし。そして、今まで考えようともしなかった短刀ちゃんの事も分かったし」
「短刀ちゃん?」
「愛称よ。ずっとあたしと一緒に戦ってきたんだからね、あの短刀ちゃんは。いくら呪われてるって言っても、あたしを守ってくれる大事な相棒なの」


 それを言ったら、久遠くんは苦笑して、あたしの手を握り返した。


「あの短刀には侍の血も染み付いてるからな。誰かを守りたいっていう気持ちは、少なからず残っていると思うよ」


 久遠くんだって。
 事あるごとに、あたしを守るって言ってくれてるじゃない。
 って、物語に出て来るあの侍も、本当は自分が姫様を守りたかったに違いない。
 ちょっとそこら辺、似てるような気がするけど・・・。