下町退魔師の日常

 ま、久遠くんがあんなだから、商店街を歩いてるだけでもみんなに声を掛けられそう。
 それに、何故か銭湯の売り上げも伸びてるのよ。
 普段絶対に来ないような女子校生が、学校帰りにお風呂に入って行くんだから。
 ま、ノリカちゃんはもうこの町を出て行って、一番客が居なくなったから助かるけど。


「どうなんだ?」


 こう聞いてきた幹久に、あたしは首を傾げる。


「だから何が?」
「久遠とどうなんだって聞いてるんだよ」
「・・・・・・」


 たっぷり5秒間の沈黙。
 その間、久遠くんの色んなイケメンっぷりが頭の中に浮かんで来て・・・思わず、ほっぺたの辺りがあったかくなって。
 いかんいかん、久遠くんはただの住み込みのバイト君なんだから。
 今のあたしの状況で変に意識したら、ただのオトコに飢えてるヤツみたいじゃない。
 いや飢えてるっちゃ飢えてるんたけど。
 つか幹久のヤツ、何て事聞いてくるのよ。
 ほんっっとに、空気読めないんだから!


「どうもこうもないわよ。そりゃあ久遠くんは素敵すぎるくらい素敵だから、たまに見とれちゃうけど」
「それだけか?」
「それだけよ。つか、何であんたがそんな事聞いてくるのよ?」


 シゲさんならまだ分かるけど。
 それを言ったら、幹久はもっとバツが悪そうにギクシャクと歩いて、入り口の戸に手を掛けた。


「やっぱさ、気になるよな。幼馴染みの事はさ」
「それ聞いて、話のネタにでもしようと思ってるんでしょ?」
「まぁな。ま、何かあったら俺に相談しろよ。俺だって結婚するとき、お前に色々相談しただろ?」
「しましたねぇ・・・結婚するときだけじゃなく、付き合ってる時から色々と相談されたりノロケられたり」


 何でも話せる異性の友達ってのは貴重だけど。
 あの時はちょっと寂しかったんだよ。
 あたし、一人っ子だったから。
 仲のいい兄弟を取られたみたいな気持ちになっちゃってさ。
 変な意味じゃなく、幹久の事が好きだったから。
 少なからず、ジェラシー感じてた。
 って、今はそんな事いう気はさらさらないけどね。