馴染みの間抜けた顔を見てるとね。
 でも、今のあたしにとって何故か癒やし系の空気読めない男は、意味不明な事を言う。


「そりゃ気も使うだろ、少しはな」
「何よそれ」


 何にそんなに気を使ってるのかわからんけど、今までそんな気使ったことありましたっけ?
 すると、幹久は入り口の引き戸からそっと首だけを出して、休憩室をぐるりと見回した。


「久遠は?」
「買い物」


 そっか、と、それを確認してから幹久はやっと店に入って来る。


「何なのよ?」


 そうじゃなくても、最近ちと悩んでるってのに。
 幹久まで、ややこしい行動取らないでよね。
 少しだけご機嫌斜めなあたし。


「あ、いや~・・・」


 休憩室のソファに座って、幹久はバツが悪そうに後ろ頭を掻いたりしている。
 そして、思い出したように手に持っていたビニール袋を差し出して。


「はいよ、これ」


 受け取ると、中には野菜が色々入っていた。


「ありがと。いつも悪いね」
「ま、傷ついて売り物にならない奴だけどな」
「ううん、すっごい嬉しい」


 それからしばらく、幹久はサスケと遊んだりしていたのだが。


「ね、幹久?」



 あたしが呼び掛けると、幹久は顔を上げた。


「なんだよ?」
「何か、話でもあるの?」


 いつもなら、差し入れを持って来るとすぐに帰る癖に、今日は一体どうしたんだろ?


「ん~・・・」
「何よ、らしくないね。昔から何でも言い合ってきたじゃない」


 同い年で、それこそ保育園の時から一緒だったのに。


「そうだな」


 幹久は、おもむろに立ち上がった。


「久遠ってさ、商店街でも大人気だぜ」
「でしょうね・・・って、それがなに?」