・・・って。
 はぁぁぁ、と、あたしは番台に突っ伏した。
 こんな完璧な人、いる?
 長身でスタイル良くて、イケメンで。
 掃除は完璧、超働き者。
 ガサツなあたしなんかより断然細かいところまで気が付くし、しかも料理上手ときた。


「ローストチキン・・・」


 二人で暮らすようになってから、仕事終わりの夕ご飯は交代で作る事になっているんだけど。
 最近のあたしのご飯と言えば。
 カレーライス、スパゲッティ、シチュー、こないだ頑張って肉じゃが、そしてカレーライス。
 ・・・カレーライスのスパンが短かった。
 でもね、久遠くんたら。


「うん、こないだのカレーライスも旨かったけど、今日のも美味しいな」


 なんて言ってくれるんだよ。
 んでもって、最近の久遠くんの夕ご飯は。
 サーモンのマリネ、ビーフストロガノフ、筑前煮。
 そして今日はローストチキン・・・。


「あーもう・・・」


 番台に突っ伏したまま、あたしはその場でのたうちまわる。
 なんか・・・完全にやられてる。
 女として・・・これは、かなりやられまくってる。
 なぁんでこんなにガサツなあたしと、こんなに完璧なイケメンが一緒に暮らしてる訳?
 久遠くんは、そんなあたしに文句を言った事は一回もない。
 そこがまた、ある意味たまんないんだけど。


「よぉ、まっちゃん」


 開けっ放しの入り口から顔をのぞかせたのは、幹久だった。


「よぉ、ミッキー。何か用?」
「何だよ、配達の帰りに通ったんだよ。のぞいて悪かったか?」
「べっつにぃ~・・・」


 何で悪いなんて思うのよ。
 今更そんなことに気を使う仲じゃないでしょ。
 つか、あんたの顔見るとなんか・・・ホッとするわね。