下町退魔師の日常

 お風呂は気持ち良かった。
 “仕事”をした日は、あいつらの異臭が身体に染み付くみたいで嫌だ。
 もしかしたら久遠くんも、あたしの身体が臭かったのかな。
 あたしは、湯船から腕を出して、匂いを嗅いでみる。
 ボデイーソープの匂いしかしなかった。


「・・・・・・」


 膝を抱え、たった一人で独占しているこの大きなお風呂で、縮こまる。
 さっきの戦いを久遠くんに見られた事で、色んな思いが頭の中をぐるぐると回っていた。
 しばらくそのままでいたけど。
 あたしは、意を決して湯船から出る。


「疲れ、取れたか?」


 お風呂から上がると、久遠くんはアイスコーヒーを作って休憩室で待っていてくれた。
 なんかもう、至れり尽くせりって感じで、あたしは笑顔を浮かべる。


「ありがと」


 まだ濡れた髪の毛をタオルで拭きながら、あたしはソファに座る。
 久遠くんは黙っているけど。


「聞きたいよね、色々と」
「そうだな・・・マツコが、苦痛じゃなかったら」


 静かに、久遠くんは言った。
 うん。
 苦痛とかではない。
 この町で生活していくには、この町のありのままの姿を知らなければいけない。
 別に、他所から来た部外者を受け入れない訳じゃない。
 そして、ノリカちゃんのように・・・出て行こうとする人を、この町に縛り付けている訳でもない。
 ただ、この町にいるからには、本当の事を知らなくてはいけない。
 そうじゃないと、さっきみたいに、命に関わる事になるから。