だけど、気になる事は。
 時折、久遠くんは何処か遠くを見ているように物思いにふけっている。
 お客さんに話し掛けられると、我に帰ったように仕事を再開するんだけど。
 こうやって見ていると、至って普通の好青年なのに。
 血が見たいっていう、久遠くんの“衝動”。
 それがいつ発症するか分からないから、いつもどおりに仕事をしながらも、あたしは何処かで気を抜く事が出来なかった。
 ナイフとか刃物とか、久遠くんの周りにないかと気を使う。
 あんなもん見たら、またそこら辺にいる人を襲うかも知れない。
 そうは言っても、営業はいつもと変わらずに滞りなく時間が過ぎていく。
 だけど、その次の朝。


「ふー・・・!!」


 そんなサスケの唸り声で、あたしは目を覚ました。
 すぐに起き上がり、身支度をする。
 窓の外は快晴。
 雲ひとつない青空が広がっている。
 そんな爽やかな朝だというのに、サスケはずっと唸り声をあげていた。
 それが何故なのかは、あたしにはもう充分に理解出来ている。
 ジーンズに薄手のトレーナー、そして髪の毛を、邪魔にならないポニーテールにしっかりと結んで、じいちゃんの仏壇の下にある戸棚の引き出しを開けた。
 そして、丁寧に布で包んである、長さ30センチくらいの包みを取り出して。


「前回より4ヶ月か・・・早かったね」


 じいちゃんの遺影に向かって、話し掛ける。
 そして、かしこまった様子でちょこんと横に座ったサスケの頭を撫でて。