外には幹久が、少し仏頂面で腕組みをして立っている。
 何でそんな顔してるの。


「行って来るよ、幹久」
「あぁ」


 幹久はそれだけ言うとシゲさんが座っている休憩室のソファの向かい側に、あぐらをかいてドスンと座った。


「何あれ。何か怒ってる?」
「幹久は幹久なりに、あのノートに関する意見を俺に教えてくれただけだよ。だけど、俺の意見とは少し違った。それだけだ」


 ふぅん。
 それだけであんな態度とるなんて、子供じゃあるまいし。
 それにしても、幹久も文字読むのが早いんだよね。
 大学も文系だったし、卒業後はそれなりにいい会社に勤めてたし。
 あっという間に、父さんのノート読み解いちゃうんだから。
 あたしなんて、一日かけて読んだのが半分ちょっと。
 その後の内容は、久遠くんが口で説明してくれたから、凄く分かりやすかったけど。
 取り敢えず、作戦は。
 要約すると、久遠くんが祠の扉を開ける。
 あたしが鬼姫を倒す。
 以上。
 って・・・こんなに上手く行けばいいんだけどね。
 昨日久遠くんと散々話をして、結局あたしは久遠くんの意見に全面的に賛成する事にした。
 細かい事は、久遠くんの意見に従う。
 どうせ細かい文字読むの苦手なんだし、あたしは頭脳派じゃなくて肉体派だし。
 久遠くんのこと、信じてるし。
 取り敢えず祠の空き地に行ってみて、その扉を開けてみる。
 まず、ここから始めようと思った。
 いきなり鬼姫が出て来るかも知れないし、もしかしたら出て来ないかも知れない。
 魔物が出て来る可能性だってある。
 当然そん時ゃ、あたしが片付けるけど。
 ・・・手強い相手が出てこなけりゃいいんだけど・・・。
 ま、そこを悩んだって無駄なんだ。
 先ずは行動して、あとは臨機応変に対応する。
 久遠くんと松の湯を出て、裏の空き地に向かいながら、あたしはこんな事を考えていた。
 そう――とても、悠長に。