下町退魔師の日常

「何か俺達に出来る事はあるか?」


 真剣にそう言う幹久。
 あたしは、何て答えていいのか分からずに、久遠くんの顔を見た。


「まだ、何とも言えないな。取り敢えず今日はこのノートを見ながら鬼姫の事を理解して、作戦も考える」


 さすが久遠くん。
 ちゃんと答えてくれた。


「そのノートは?」
「あたしのばあちゃんと母さんの戦闘日誌、それと父さんが20年前に調べた鬼姫に関する資料だよ」
「そんなもんが残ってたんだな」


 感心したように、幹久は言った。
 久遠くんは笑って。


「ま、俺は昨日のうちに全部読んだから・・・後はマツコが、ちゃんとノートを読んでくれるだけなんだけど」
「あー、ムリムリ。こいつ昔から、読書とか活字とか苦手だから」
「やっぱりな」


 久遠くんは、大袈裟にため息をついて。


「早く読んでくれないと、二人で話し合いも出来ないからなぁ」


 え?
 ちょっと待って、さっきから久遠くん、やたらと口数が少ないと思ってたら。
 あたし待ちなのぉ!?


「昔からやたらと遅いんだよ、コイツは。一行一行、自分の中で吟味して理解しないと次に進まねぇんだから」


 幹久が小馬鹿にするように、あたしを指さした。


「マツコ、取り敢えず最後まで読み流せよ」


 呆れたように、久遠くんが。
 あたし、そんなに遅いかな?
 いや、確かに昨日は、あたしが寝ている間に久遠くんは父さんのノートを読破したらしいけど。
 あたしは今日一日かかって、まだ半分ちょっと・・・。
 一生懸命読んでたつもりなのに。


「あ・・・あはは~・・・ごめん」
「あんまり一生懸命だから話し掛けない方がいいと思って黙ってたんだけどな。たまにブツブツ独り言言ってるし」


 も、笑って誤魔化すしかない。
 しっかし、逆の立場だったら我慢できないよねぇ。
 久遠くん、今日一日よく文句も言わずに我慢出来たなぁ。


「それで、今日は松の湯も休みか。2、3日は休むんだな?」
「うん。町の人達には申し訳ないけど、これも魔物退治に関係する事だから・・・」
「気にすんな。ただ」


 幹久は、顎をさするような仕草を見せた。


「町のジジババ連中には黙ってた方がいいかもな。若い連中には、俺が声を掛けておく」


 幹久の言葉に、あたしは複雑な表情を浮かべた。