下町退魔師の日常

「町の人達を悪く思うなよ。当然の事を言ってるんだから」
「何でよ。誰も久遠くんの事を分かってくれないんだよ?」


 何も悪い事をした訳じゃない。
 仕方なかったんだよ。
 久遠くんと鬼姫が深い関わりを持っていたからって、久遠くんが悪い訳じゃない。
 あの衝動だって、わざとじゃないのに。


「いや、ちゃんと分かってくれてる。だからこそ、そう言わなくちゃならなかったんだよ」
「何よそれ。ぜんっぜん分からない」


 目に涙をいっぱい溜めて、あたしは久遠くんを見上げた。
 だけど、久遠くんはそれを見てプッと吹き出して。


「どういう顔してんだよ」
「だって・・・悔し・・・」


 何でここで笑うのよ。
 膨れっ面をしていると、久遠くんはぽんぽん、と、あたしの頭を撫でた。
 そして、あたしの顔を覗き込んで。


「町の人達はみんないい人。俺が何を言ってもそう言い切ったのはマツコだろ」
「・・・・・・」
「なら、最後まで信じ抜けよ。何があっても」


 何よ・・・最後までとか・・・。
 まだ納得いかずに、あたしは久遠くんを見つめて。
 さっきの笑顔とは裏腹に、久遠くんは真剣な顔になった。


「マツコ、この3日間だけ、松の湯を休めないか?」
「え?」


 松の湯を休む?
 何で?


「この3日で、勝負する」


 ーーあ。
 そ、っか・・・!
 そうなんだ、久遠くん。


「3日あれば、マツコの父さんが残してくれたノートをもっと良く理解して、作戦も立てられる。だから良かったって言ったんだ」


 そうか!
 だから3日・・・。
 そう言う事なら。
 魔物退治の時以外に松の湯を休業するなんて、今まで有り得なかったけど。
 どうせ今日も、開店休業状態だろうし。


「問題なし!」


 勢いづいて、あたしは言った。
 この3日で鬼姫を倒す。
 そしたら、町の人達も今度こそちゃんと、久遠くんを受け入れてくれるだろう。