愛情の鎖


それが梨央の手だということはすぐに分かった。

やけにひんやりとした感触だった。

ふいに隣へと視線を向けると、梨央は真っ直ぐ澤田達を見つめたまま自分の行動にまったく気付いてない様子だった。
無意識に何かにしがみつきたい、そんな真相心理なんだろうか?

目の前の梨央は一言も発することなくただ澤田宗一郎の不倫現場を神妙な面持ちで見つめている。

やっぱりこういう場面はショックなんだろうか?

これだけ堂々と仮にも旦那だと思っている相手の浮気現場を見るのはさすがの梨央も…

それを裏付けるように俺の腕を掴む強さがどんどん増していき、それに比例するようになぜか俺の心情も面白くなくなっていた。


「おい」

「……ひゃっ」

「離せ」

「えっ?」

「手、強く握り過ぎだ」


そうやってそっけなく声を出せばハッとしたように俺の方へ向く梨央。「ご、ごめんなさい!」と小さく呟きながら焦ったように頭を下げた。