フシギな片想い



「好きでもないけど」と余計な一言を添えて、ちょっとムッとしたけれど、それ以上に真央が案外いい奴なんだと解って、嬉しくなった。


「話は済んだし、帰るぞ。腹減ったし」


電灯の柱に括り付けたロードバイクのハンドルを握り、私に声を掛ける。


「今日のこと、絶対秘密にしてね。弱み握ったと思って、何か奢れっていうのもやめてよね」


「お前、しつこそうだし、面倒くせぇからいちいち言わねぇよ。お兄にキスしたってことは忘れる」


「してない!未遂だってば!」


立ち上がり、真央を責めた。


真央は相変わらずの冷めた表情で、「はいはい、未遂ね」と棒読みで私を嗜めた。




夜の住宅街を真央と並んで歩いた。


真央の押す自転車の車輪の音だけがカラカラと響いている。走ったり泣いたりで、掻いた汗が引き、体が急に冷えてきた。


「ベシッ」と変なくしゃみが出た。ぐすんと鼻を啜る。


「お前、チャリ乗って先、帰れ」


コンビニの前で突然、真央が立ち止った。ハンドルを私に託す。


漫画週刊誌を買いたいのだと付け足した。


「解った。先に帰ってる」と頷くと、真央はおもむろに着ていたパーカーを脱ぎ、私に差し出した。