………するつもりだったんだけど。



「……おはよ。引地」

「あ……はよ。音瀬……」


有り得ない。


あの性悪無愛想男の音瀬くんが話掛けてきた!?


“引地”とか呼んできて馴れ馴れしい。


なんか不自然。


いつも、うるさいくらい話してくる桜井諒哉は車の女の人とずっと話してるし。


うざくなくて結構。



「あの女の人、俺らが中学ん時から良くしてもらってた先輩の奥さん」

「え?」

「気になってたんじゃないのか?……あの人について」

「べ、別に」

「かわいくないな、やっぱ」


いつも無愛想なのに一言多いっつーの。


あんな桜井諒哉が夢中になるぐらいの女性ったら多少は……気になる。


ここからじゃ、顔もよく見えないし。


「銀たん珍しい~!自分から、女の子に声掛けるなんて!」

「は、はぁ?退屈しのぎだよ」

「とか言いつつー……実は蘭子ちゃんに寄せる片思い!!」

「ふざけんな。誰がこんな金髪女好きになるか」


腹立つ。


あたしだって、アンタみたいな無愛想好きになるかよ。


鬼田くんはいがみ合うあたし達を苦笑気味にチラッと見た。