スタジアム中ほどの席に座るあたしたち。

前のも後ろもファンで埋め尽くされていて。

至るところから会話が聞こえてくる。





「生の碧に会えるとか、マジラッキーだよね」



「あたし、泣くかも」



「あぁ、早く始まらないかなぁ」





いつもはあたしの隣りにいてくれるのに、そんな会話を聞くととても遠く感じる。

平凡で、ヘタレで、甘えん坊だけど、彼は大スター。

日本中が恋焦がれる憧れの人。

何だか複雑な気分だな。

蒼を独り占めしたいのに。




でも……

あの優しい笑顔や甘えた顔は、あたしだけのもの。