何これ……
何かの間違いだよな?
俺の知ってるFは、こんなんじゃない。
こんな馬鹿はしない。
「ふ……ふざけてるんすか?」
身体がガクガク震えた。
ムービーの中のFは、俺の知ってるFとは全てが違ったから。
「元気出るでしょ。
曲名は『モスキート』」
戸崎さんは満足そうに胸を張っている。
何がモスキートだ。
戸崎さんは……
俺のFを台無しにしやがって!
「楽しいんだ、俺ら」
戸崎さんは思い出したように、ふっと笑う。
「楽しむことが一番」
「え?」
俺は戸崎さんを見ていた。
戸崎さんはいつものように笑って俺を見ている。
「だから、明後日、楽しみなよ」
「……」
「中山が楽しかったら、きっと彼女も楽しんでくれる」
戸崎さんはなんで……
なんでそんなことを言うのか?
いつもいつも戸崎さんの言葉に驚かされるよ。
確かに俺、楽しむことを忘れていた。
練習に必死だった。
会社では、Fの話題を避ける戸崎さん。
もちろん俺にもFのことを逐一話したりはしないが、時々こんなサプライをしてくれる。
俺が大ファンなのを知っているからかもしれない。
戸崎さんはそうやって、俺を元気付けてくれる。
本当に素敵な先輩だ。
そして、俺はますますファンになる。



