どこかのスタジオに、彼らがいた。
どうやら最近の映像らしい。
戸崎さんは見慣れた戸崎さんで。
黒い髪に、何だかシンプルでセンスのいい服を着ていた。
そして、いつもの位置……正面にいて、こっちを見て笑っている。
左には酙。
見慣れたベースを持っているが、雰囲気がいつもと違う。
戸崎さんを見て、笑いながら言う。
「蒼、準備いい?」
戸崎さんはいつものように笑って頷く。
「何だったら本番を想定して衣装も変える?」
酙の問いに、ドラムセットに座る玄が言う。
「まじか!
俺は黄色がいい!!」
そんな玄も、やっぱり親睦会に現れた普通の兄ちゃんだった。
「賢一が黄色で優弥は赤色。
俺は青色決定でしょ?
だから慎吾は茶色」
「えっ、やだよー。
茶色ってウンコじゃん!
蒼が青色とかつまんないよ。
蒼が茶色だよ」
「えー。
じゃ、黄色はゲロのイラストにしよ」
「じゃ、赤色はゴキブリだ」
騒いで演奏どころじゃなくなる三人。
その様子に唖然とする。
そして、マイクのすぐ近くで艶の声が聞こえた。
「てめぇら!
仕方ねぇから付き合ってやってんだ!
はやくやるぞ」
艶はそう言ってカメラを固定し、戸崎さんの右側に来てギターを持つ。
そしてカメラを睨んだ。
ごくりと息を飲む。
これからどんな演奏が始まるのだろうか。
きっと、いつものカッコ良くて痺れるFの……



