中山は何か大きな勘違いをしている。
俺が恋愛テクの伝授?
冗談じゃない。
そんなテク、持ち合わせてないのに。
唯ちゃんには正面からぶち当たった。
いつも自分の感情に素直に。
だけど、ハッとした。
はじめはヤケクソでやっていた碧。
かつては馬鹿なことばかり吐いていた。
女に乗るのが得意とか、ガンガン責めるタイプとか。
女に爪を立てられると燃えるとか。
まさか……
まさか中山……
「あの……
俺、テクとか得意じゃないけど……」
悲痛な顔になる中山。
その顔に弱い俺。
「……まっすぐ彼女に思いを伝えれば……」
「戸崎さん、あなたには失望です」
中山のいつもの決め台詞。
目に涙を溜めて俺を見る。
「あなた、プレイボーイじゃないのです?」
「いや……唯ちゃんが最初で最後の彼女」
ただし、経験人数は不明という曰く付き。
そんなこと、口が裂けても言わない。
唯ちゃんが可哀想だから。
中山は再びぽかーんと俺を見た。
何だか本当に失望させてしまったな、俺。
「ごめん、中山!
なんでも協力するから!!」
俺はまた、得意なお人好しを発揮していた。
中山は顔を紅くして俺を見た。



